小説家鈴木輝一郎のはてな日記

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松本清張を超えた!加藤元『1999年の王』(角川書店)

加藤元『1999年の王』(角川書店 2017/9/30)読了、感想。
これは超超超超超収穫です。ミステリ関係者は必読。
保険金殺人のクライム・サスペンスです。ストーリーはきわめてシンプル。保険金殺人を手がける男の成育歴話です。

どこが凄いか? 犯罪を扱ったフィクションは、どうやっても嘘臭さから抜けられない。身近に犯罪者はいないから「現実っぽいファンタジー」になるのは避けられない。
本作は、まるでルポのよう。しかも現実の保険金殺人のルポは皮肉なことに極端すぎて現実離れしすぎてる。本作は「読者と等身大の犯罪者」になってる。

かつて「ミステリでありながら人間を描くことはできないか」ってな流れで社会派ミステリが生まれたんだが、松本清張は現代の感覚からは遠いし、いま読んでみると、言われているほど松本清張はすごくない。

本書はかつての社会派ミステリ以上に、「犯罪で人を見つめなおす」作品で──ええい、言ってしまおう、松本清張よりすごいぞ。

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凄いぞ。

1999年の王 (角川書店単行本)

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